20年代の味

20年代の味は、やっぱりどこか「初恋の味」がする。

栄養料理百珍
日本鮭鱒販売聯盟会
函館水産販売株式会社/昭和13年(非売品)
Condition;良
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「栄養料理百珍」との書名ながら、書かれているのはすべて鮭の話。「奥様や御嬢様に知って戴きたい鮭の御話」では、鮭の一生の不思議や、どんなに栄養があるかを力説。続いて、鮭の料理法が50以上掲載されています。変ったものとしては、「鮭のあちゃら巻」という料理。鮭を刺身のように身をそぎ、酢とミリンと砂糖の中に付け込み、それを薄い玉子焼きと大根を薄くむいたもので巻いて食べるというもの。材料の中にちょくちょく「味の素」という商品名がそのまま登場しているのも興味を引きます。トロピカルな表紙絵が食欲をそそる? 14.8cm×10.7cm、40p


大東京うまいもの食べある記
白木正光/丸ノ内出版社/昭和8年
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Condition;編年イタミ

著者の白木正光は、時事新報の記者で、菊池寛の「半自叙伝」にも登場している人。 序より抜粋−「食堂、カフェ流行は昭和文化が生んだ最も著しい産物の一つとして、文明史的に見ても非常に興味ある現象と思いますが、そうした観点から筆を取ったのが、『大東京いまいものたべある記』であります」。昭和8年当時のレストラン、カフェなどが地域別に列挙され、味や内装、値段なども書かれています。「はしがき」を読んでいて、ちょっと不思議に思ったのは、「今日のバーやカフェー」の最初は、洋画家・宮武辰夫が、銀座松坂屋の横に開いた“ユング・フラウ”という小さい酒場が最初、と書かれていること。この店の名は初めて聞きました。案外知られていることなのでしょうか?19cm×11cm、453頁。


洋食の食べ方と洋服の着方
横山正男
実業之日本社/昭和12年初版
Condition;良、函付

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同じ著者の同書名の本が大正14年にも出版されているようですが、昭和3年の大連ヤマトホテルの晩餐会の写真などが掲載されていることから、まったく同じ内容ではないと思われます。急激に一等国の仲間入りをした日本人にわかりやすく西洋の食事や服装のマナーの習得を促すべく多数の写真を使って説明してくれています。でも、なかには気になる記述も。たとえば「西洋では遅刻することを非常な失礼、従って、恥辱としているが、どうも日本では一般に時間の観念がすこぶる弱い」という一文。日本人は海外の人々に比べて時間に几帳面なはず。この当時は時間にルーズだったのでしょうか。 18.2cm×10.4cm、242p。

家庭のために(通俗医学と栄養料理法)
クェーカーオーツ会社/昭和4年(非売品)
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Condition;ページはずれアリ

クェーカーオーツ社といえば、オートミールを製造している会社と記憶していますが、このころからあったんですね。この小冊子ではクェーカーオーツ調理法講習会の写真や、この食品がいかに健康的なものであるかの医学博士の論文、献立の手引き表などが載っています。17.8cm×12.6cm、43頁。


手軽で美味い 家庭料理千種
主婦之友社/昭和17年44版
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Condition;傷み、表紙スレ

「この書の発行に際して」の一文より−「経済で美味しく、しかもどこの家庭でも容易に試みられるもの、一千種を選択し、一巻としたのがこの書であります。この書に収められた料理一千種は、すべて実際に作り、それぞれ必ず試食を仰いだものであります。『こんな風な料理は、美味しいかも知れぬ』などという、空想から生まれ、単なる想像だけで筆を執ったような料理は、ただの一種もありませぬ。この書の自信を以ってお薦めできる所以であります」。野菜料理297種、魚料理302種、肉料理176種、玉子料理28種、豆腐料理33種、麺類37種、御飯とパン料理154種、紹介されています。18.8cm×13.5cm、634頁。


奥様百科寶典 主婦之友新年号付録
主婦之友社/昭和10年初版
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Condition;函欠け

奥様の家事一切を豊富な図版を使って丁寧に説明していて、まさしく宝典。田中絹代が彩色カラーで24ページにわたって実演している「一年の家事」、山路ふみ子実演の「一ヶ月の家事」、千葉早智子の「一週間の家事」、北見禮子の「一日の家事」などは奥様ならずとも感動もの。18.4cm×12.5cm、464頁。


豆腐百珍(教育社新書)
何必醇・福田浩訳/教育社/1988年初版
price;¥500
Condition;良

江戸時代に書かれた料理本の名著「豆腐百珍」、「豆腐百珍続編」、「豆腐百珍余禄」の3点を現代訳して収録したのが本書。20年代の味というより「江戸時代の味」ですね。天明から寛永にかけて料理の素材一種につき様々な料理法を紹介する「百珍物」が次々に刊行されたそうですが、そのきっかけとなったのがこの「豆腐百珍」とのこと。17.2cm×10.6cm、286頁。


にっぽん洋食物語
小菅桂子/新潮社/1984年3刷
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Condition;少ヤケ

目次より−「西洋料理事始」、「辛味入汁掛飯(ライスカレー)」、「珈琲」、「コロッケを推理する」、「牛肉ノススメ」、「西洋礼式作法」、「小さな店の片隅で」、「牛乳とあいすくりん」、「ジャパニーズ・ソース」、「汽車の中の料理屋」、「カツレツとトンカツ」、「和洋折衷料理」、「ラムネ」。西洋文化を取り入れて独自に編集してしまう日本文化。本書では「食の編集文化」が軽妙な語り口で紹介されています。


聞き書き 東京の食事
日本の食生活全集・編集委員会/農山漁村文化協会/1988年初版
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Condition;天に蔵書印アリ、本文良

各都道府県別に一冊づつ編集した農山漁村文化協会発行の労作「日本の食生活全集」全50巻のうちの東京編。本書では、大正から昭和初期にかけて東京各地に生きた13人のお年寄りから、当時の食べ物の話を聞き書きしています。「深川左官職人の『食の歳時記」、「浅草駒形のかばん職人夫婦の四季の仕事と食べもの」、日本橋人形町ハイカラ女学生の四季と食べもの」などなど。当時の食生活について外食関連の資料は多いものの、庶民の日常生活の「食」に関してはなぜか少ないようです。その意味でもこの「食生活全集」は大変貴重なものだと思います。21.7cm×15.2cm、352頁、付録8頁。


大正十五年の聖バレンタイン
川又一英/PHP研究所/1984年初版
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Condition;少汚れ

ロシア革命で祖国を追われ、1924年、いわゆる白系露人として神戸にやってきたモロゾフ一家の物語。日本に着いたときの所持金を元手にチョコレート菓子の製造販売をはじめた一家は・・・。見返しにモロゾフのサインが入っています。19.5cm×13.5cm、226頁。


美食の歓び
キュルノンスキー、ガストン・ドリース/柴田書店/1970年初版
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Condition;良

1927年に、投票によって”食通の王”に選ばれ、翌年、”美食アカデミー”を創設した、フランス随一の美食家キュルノンスキーと、食関連の著書で知られるガストン・ドリースによる、「美食」のエッセイ集。短いエッセイが多いのですが、そのタイトルを見るだけでも、くすぐられます。「立体派料理」、「大衆とスープ」、「殺人的爆発料理」、「演劇と美食家」などなど。18.6p×12.9cm、235頁。